1.音訳とは?

 「音訳」という言葉は古い言葉です。国語辞典などで調べると「サンスクリットを日本語の音にすること」という解説がでてきます。何と!「お経を読むこと」という意味があります。でも、ここで言う「音訳」は「音声訳」という言葉の省略形で、「視覚障害などの人のために、文字を音声に訳する」ことなのです。少し理屈っぽい解説をしますと、「視覚障害など情報障害の人のために、文字体系の習慣を、求めに応じて配慮しながら、音声体系の習慣に置き換えること」です。

2.電話番号ではどのように

 皆さんが、誰かの電話番号をメモに書き取るとき、どんな書き方をしますか。たぶん、下のような書き方をすると思います。

052-220-3292
052.220.3292
052(220)3292

 ほかにも、まだ書き方があるかも知れませんが、私たちが電話番号を書き取るときの習慣です。誰もがこの数字のつながりを見れば、「アッ、電話番号ダ」と気がつきます。電話番号を書くときの私たちの誰もがわかる習慣です。

 次に、この電話番号を誰かに音声で伝達しようとしたとします。どんな言い方、どんな読み方をするでしょうか? 相手に電話番号が伝わればよいとします。

「ゼロゴーニの」「ニーニーゼロの」
「セロゴーニ」「ニーニーゼロ サンニー……」
「レイゴーニ」「ニーニーレイ サンニー……」
「レイゴーニ」「ニーニーマル……」

 いろいろな読み方があると思います。そのどれもが電話番号伝達の目的、「文字を音声に変えて、番号伝達の目的」を果たしています。では、次のケースだったらどうでしょう。

3.求めに応じて配慮を

 ある視覚障害者から、「いま、盲人用ワープロの練習をしています。練習テキストを録音してくれませんか?」と求められたら、あなたはどんな工夫をしますか?

 「ビジネス文の書き方」のところに、電話番号がでてきます。「求めに応じて」ですから、ワープロのキー入力に合わせた読み方が妥当ですね。そうしますと、電話番号の例でいいますと……。

「ゼロゴーニ ハイフン……」
「ゼロゴーニ マイナス……」

 文字キーで数字を打ち込む人向きには「ハイフン」、テン・キーを使う人向きには「マイナス」が妥当ですね。これが、音訳の定義でいっているところの「求めに応じて配慮」なのです。使う人を理解することによって、誰でもできることなのです。